Bitter&Sweet




中庭を去って行く本郷先生の後ろ姿を見つめてから



お兄ちゃんに視線を移すと



―――――――お兄ちゃん?



地面をじっと見つめて
グッと手を握りしめてた


頭上から太陽の光が降り注ぎ


うつむいたお兄ちゃんの顔には影が落ちて


その目は とても 虚ろだった




「…お兄ちゃん……」


不安になって

すごく怖くなって


お兄ちゃんの白衣の袖口を掴んで


「お兄ちゃん!」


大きめの声で呼ぶと


少しの間があいて


「………え?」


何事もなかったかのように
私を見た



「どうしたの?お兄ちゃん」



「どうしたって 何が?」



「………何がって……」


さっきの表情、おかしいよ



お兄ちゃんは フッと笑って
私の隣に座った



「変な感じ。
病院で姫といるなんて」


膝の上で 手を組んで


「前と…同じなのにな
おかしいな………
全然、そう全てが違う」


お兄ちゃんは遠くを見つめるような目をして
彩り豊かな道端の花壇の方を向いた