本郷先生にムカついて
バシッと肩を叩くと
「痛いなぁ~、姫子ちゃん」
私に叩かれた肩を擦りながら
「本当の事だろう?
患者さんからラブレターもらったじゃない?」
すっかり表情が固くなったお兄ちゃんが
「患者さん?」って低い声で呟いた
本郷先生は笑って
「そ。今日、退院した4歳の男の子」
な、なんだ。
雅哉さんの事じゃないんだ
ホッとすると
お兄ちゃんも「はぁ~~」って大きく息を吐いて
肩が下がった
そんな お兄ちゃんを本郷先生が意地悪な笑顔を浮かべて
「イヤだね。このシスコン」
「うるさいな そんなんじゃないよ」
ベンチから立ち上がりポンポンお兄ちゃんの肩を叩いて
「姫子ちゃんは可愛いから
すぐだよ。持って行かれるの」
お兄ちゃんの耳元に口を近付けて本郷先生は囁いた
「覚悟……決めておかないとね
――――――――お兄さん」
もう、なんて変な事を言うのよ
文句を言ってやろうと口を開きかけた時
チラッと本郷先生は私を見て
「あとドクターをもっと敬えと妹にちゃんと躾してね?
ナースに叩かれたなんて初めてだ」
うっ………
私は何も言えなくなって
本郷先生は「じゃ」って病院へ戻って行った



