5日後
楽くんは退院する事になった
ナースステーションで点滴の準備をしてると
「姫子ちゃ~ん」
楽くんがピョンピョン飛び跳ねながらカウンターで手を振ってた
「楽くん!」
ナースステーションから出て
楽くんに「退院おめでとう」と言うと
「お世話になりました」
ボストンバッグや荷物をたくさん持った雅哉さんが頭を下げた
「いえいえ」
私は手を横に振って
「もう戻って来ないでね」
楽くんの頭を撫でた
「ね、姫子ちゃん」
本郷先生の悪影響で私を『姫子ちゃん』と呼ぶ楽くんが
「これ」
手紙を差し出した
「私に?」
コクコク楽くんはうなずいて
「ぼくね、姫子ちゃん大好き」
楽くん~
なんて可愛いのっ
天使だ
この子は まぎれもなく天使だ~
「ありがとう」
手紙を受け取り、嬉しくて少しウルッときた
満足そうに笑う楽くんの後ろで雅哉さんが少し顔を赤くして
「じゃ、本当にありがとうございました」
深く頭を下げ
「楽、帰るぞ」
「は~い。じゃバイバイ。またね、姫子ちゃん」
『またね』がありませんように
楽くんが もうここに戻る事がありませんように
私は笑ってエレベーターホールに向かう二人の後ろ姿に手を振った



