「なぁ、新」
「ん~?」
「隠し子なら、堂々とお断りしても………」
「ダメだね。翠くん
正妻の子だろうが
愛人の子だろうが
美紅さんは糸井院長の子だから」
「断ったら?」
「……この病院には、いられないよねぇ」
はぁ………
ため息ついてカウンターにひじをつき
前髪をかき上げた
まさか愛人の子とは……
「そんなに結婚が嫌なら
さっさと病院辞めて夢を叶えなよ」
「……簡単に言うなよ」
「――――――やっぱり
姫子ちゃんがネックなの?」
正直なところ
もう そろそろ夢を叶えたい頃だった
だけど
記憶をなくした姫に
着いてきて欲しいと言えるはずもなく
診療所をやりたいという夢は
無期限の保留になってた
「ぼくには、わからないよ
翠が どういうつもりで姫子ちゃんをそばに置いているのか」
新の言葉に居心地の悪さを感じながらグラスに口をつけた
アルコールが喉に熱かった



