「……ちゃん?」



「ねぇ…………」



「……ちゃん?……お兄ちゃん」



「ねぇ、お兄ちゃんってば!」




――――――――――ハッ



姫の声にハッとすると



「どぉしたの?ぼんやりして」



「……あ、いや…なんでもない」



家のリビングのソファーで読書をしてたんだけど



いつの間にか ぼんやりしてた



お風呂上がりで
まだ髪の濡れた姫が


オレの前に立ち
腰を かがめて心配そうに顔をのぞき込む


「お兄ちゃんが ぼんやりなんて珍しいね?
何かあった?」



姫の濡れた髪から雫が落ちて
首筋を伝っていく



前屈みになってるから
パジャマの胸元が大きく開いて
今にも胸が見えそうで



オレは姫からスッと視線を逸らした



「本当になんでもないから」



「そぉ?」



姫は そのままオレの隣に座って


テーブルの上の
テレビのリモコンに手を伸ばした



「姫」


「ん~?」


適当に何度もチャンネルを変えて行く姫に



「髪、ちゃんと拭きなよ
肩が濡れてるよ?」


「大丈夫だよ。自然に乾くから」



オレは姫を横目でにらんでから
脱衣室にドライヤーを取りに行った