夜、ハンゴウで炊いたご飯の
底の焦げたのが
好きだって言ったら


お兄ちゃんは
「小さい頃もそうだった」って
目を細めた



焦げたご飯に
カレーをかけて食べると
日がすっかり暮れて
キャンプ場は夜の闇に
沈んで行くようだった









「夜はやっぱり冷えるね」



燃える焚き火の炎に枝を足す
お兄ちゃんの横顔に言った



パチパチ音を立てる火に
手をかざすと暖かい



赤い光を見つめてると
次第に焦点がぼやけてくる




「毛布、持ってこようか?」


お兄ちゃんの言葉に
首を横に振った


「大丈夫だよ」



枝をつぐ度に
炎は大きくなっていく


「……なんか怖いな」


呟いた私に
お兄ちゃんは
不思議そうな表情を向けた


「火、怖い?」


「ううん、なんか
勢い強くなると……
消えなくなるようで」


炎を見ながら話す私の顔を
お兄ちゃんはじっと見てた


その視線を意識しながら
誤魔化すように
「へへ」って笑って


「だけど、水や土をかけたら
あっさり消えちゃうよね……
………この炎……」



お兄ちゃんはうつむいて
「うん」と低く呟いてから
また、枝を炎に足した





それから
お兄ちゃんも私も
何も言えなくて



ただ炎を見つめてた



いずれ消さなきゃいけない炎に
枝を足しながら