ソファーに寝てしまった姫を
抱き上げて寝室まで運ぶ



姫にタオルケットを掛けたら
素早く寝室を出なければ
今夜は本当に自信がない



酔って寝てる姫に
何をするか わからない



タオルケットを
バサッと姫に掛け
背を向けて
ドアへ一歩進もうとしたら



…………クイッ


ワイシャツの背中が
引っ張られる



寝てるはずの姫が
こちらを見上げて
手を伸ばしてた



「…………姫」



「……おにーたんなんか
嫌いだよ…………」


ドクンって
鼓動が大きく響く


青い闇に
姫の目が光ってる


ワイシャツを掴む手を
そっと外して
ベッドを背もたれに
床に足を伸ばして座る



背中に姫の気配を
痛いくらいに感じながら
振り向いちゃいけないと
何度も心で繰り返した



暗い天井を見上げ


「姫に嫌われたら
生きていけないな……」


そう呟くと


「……美紅しゃんと
結婚すゆの………?」


ろれつの 回ってない
姫の言葉に笑いながら


「しないって、疑り深いな」


「……他にしゅきな人が
いるから?」


「………そうだよ」


「れも、おにーたんの
しゅきな人は
おにーたんをしゅき
じゃないんでしょう?」



それは姫のことなのに
なかなか残酷だな



「そうだよ~
ヒッドイ話だろう?
オレがこんなに好きなのに
全然わかってくれないんだ」



いいや、全然ひどくない
ひどいのはオレの諦めの悪さだ