私が一番大切じゃないの?
ギュッと
唇噛みしめてうつむいた
「姫、どうかしたか?
なんか顔色悪い……」
お兄ちゃんが
デスクから立ち上がり
私の前に来て頬に手を伸ばした
反射的にパシ……ッッ
お兄ちゃんの手を振り払った
驚いたように表情を固くして
「…………姫?」
呆然と呟いた
「あ………」
私もなんて言ったら
いいのかわからない
お兄ちゃんの手を弾いた
指先がジンジン痛む
「………触らないで……」
触らないで欲しい
他の女性を愛してるクセに
これじゃ本当に嘘つきじゃない
私はお兄ちゃんをずっと
ずっと ずっとお兄ちゃんだけを
「………私が出て行く……」
「え?」
「私がここから出て行く」
「待てよ、姫。オレが言い出したんだから………」
「嫌だよ。私ここに1人で暮らすなんて嫌だよ」
記憶を失くして
私の全てはお兄ちゃん
私の世界は この部屋と
お兄ちゃんだけだった
そんな部屋に1人
お兄ちゃんに他の女性がいる
って わかった後に1人でなんて
居られるわけない………
「私の方が荷物少ないし
こんな広い部屋、嫌なの
今月中に出て行くから安心して」
早口で言って書斎を出た



