お兄ちゃんは やっと振り返り



「姫は聞いたことない?」


「なにが?」


「耳に穴開けたら
運命変わるって」


「………あ、う~ん、
わからない」


私が首を傾げるのを
お兄ちゃんは
優しく微笑んで見つめ



「運命が変わるといいなって
ふと思ってさ」



「なにか変えたい
運命があるの?」



運命を変えるなんて
なにか悩み事でもあるのかな?



お兄ちゃんは目を伏せて



「好きな人がいるんだ」



  ドキンッ………


「好きな……人?」


声が震えた。
やだ、やだ、やだ。
お兄ちゃんに好きな人がいる



私のお兄ちゃんが恋してる



「叶わない恋だから
結ばれないなら忘れたくて


だけどオレはその人を
愛するためだけに
生きてるような物だから

運命が変わって…その人を
忘れられたらいいって」




ガンッて
大きな岩で頭を殴られたみたい


ショックで言葉が出ない。




手が小刻みに震えて
左手で右手を掴んだ



様子がおかしい私に
気づいたのか



「姫?」ってお兄ちゃんが
私の顔をのぞき込んだ。



哀しみに支配された私は
2歩 後ずさる



お兄ちゃんの顔が見られない



お兄ちゃんは私が
一番大切なんだって思ってた