胸が ざわざわ騒ぐ


悪い予感にひざが震えた



「出て行くって
そのままの意味だよ。
他に部屋借りて住むから
姫はここ好きにしていいよ」



「なんで?なんで急に……」


「家賃は今まで通り
オレが払っていくから
心配しなくて大丈夫だよ」



「違うっ!違うよっ!
なんで出て行くの?
なんで一緒に暮らせないの?」



涙が込み上げてきて
すがりつくように
お兄ちゃんの腕を握った



「なんでって………
当たり前だろう?

姫はもう仕事だってできるし
一人で大丈夫じゃないか

いい年した兄妹が
一緒に暮らすなんて
お互いに窮屈だろう?」



「窮屈?そんなこと……」



「もう、いいだろう?
一緒にいる意味がないんだ」



…………意味がない?



呆然とする私の腕を振りほどき
腕時計を見て



「姫は今まで通りでいいから
オレが部屋見つけて引っ越すよ
じゃ、この話はもうおしまいな」



私の横をすり抜けて行く


慌てて後を追い
玄関で靴を履く背中に



「意味がないって何?
だって一緒にいようって
ずっと一緒にいようって」


私はもう泣き出してた


「ずっとって
お兄ちゃん言ったじゃないっ」


小さな子供が
駄々をこねるみたいに
私は泣いた。