Bitter&Sweet




本郷先生の手を弾き飛ばし


私は身体を背けた


ドクドクドク……………


鼓動が早くなり苦しい



「…………ひどいな、南。
いくら忘れてるからって」


いつもより1トーン低い声が
背中に聞こえる



「あんなに ぼく達、
愛し合ってたのに」



…………………なに?
なにを言ってるの?



「南が意識を失くして
ぼくが、どれだけ辛かったか」



「……何の話……ですか?」



ショックで声がうまく出なくて
本郷先生に
ちゃんと聞こえただろうか?




「……南がぼくを忘れて……
どんなに哀しかったか」



ドクドクドク………


聞きたくない



だって、まさか





「ぼくと南は将来まで誓った恋人同士だったのに」






「…………うそ……」



「嘘?
なぜ、そんなことを言えるの?
南は何も覚えていないでしょう」



「だ、だって、お兄ちゃん
そうよ、お兄ちゃんは何も…」



私と本郷先生が
付き合っていたなら
お兄ちゃんが黙ってるわけ…



「翠には
内緒で付き合ってたから

ぼくと翠は親友だし
南は翠の大切な妹。

南だってわかるでしょう?
翠はかなりのシスコン
心配かけたくないって
南が翠には内緒にしてくれって
……覚えていないだろうけど」