Bitter&Sweet




「ねぇ、翠さん?」


オレはショックで
何も言葉が出なくて


少しでも気を抜けば
足の力が抜けそうだった



「私は
母を幸せだったと思えません

私は母と逆にいた父の正妻さんの立場になりたい」



「……間違いですよ
オレは妹をそんな………」


オレは姫をそんな風に
愛していない



だけど
口にするほど自信もない



「私の母は父のお気に入りのお人形さんだったんですよ


翠さん
あなたのお姫さまだって
そうじゃありませんか?」



違う、違う、違う、違う、違う


姫はお人形なんかじゃない



「将来を誓えないけど
他の誰にも渡したくない
彼女はオレのモノだ

翠さんはそう思ってる

私の父と同じです」


「……違う」


違わない


…………違わない



「私は記憶を無くしてるお姫さまに真実を話す気も

ましてや、あなた達の過去を誰かに話す気もありません

夫になって欲しいあなたを
おとしいれても 私には何の得にもなりませんし

父の権力に訴えることもしません
父はあくまでも橋渡しですから」



「美紅さん。
オレなんかと結婚したって
幸せになれませんよ……」



「それを決めるのは私です

私は翠さん
あなたの全てを愛せます

翠さん、あなたは

―――――南さんを
本当に愛していますか?」