「それは、春から復帰した妹が心配だったからですよ」
平然と答えても
「嘘です」
美紅さんは首を横に振った
「最初、何も知らない私は
南さんを
あなたの恋人だと思った
でも、
南さんを見つめる翠さんの目は」
そこで美紅さんは戸惑うように言葉を切った
なんだよ?
そこまで言うなら言えばいい
美紅さんの目に映った
姫を見つめる
オレの目を知りたい
美紅さんの洞察力は
的確だったから
教えて欲しい
そんな気持ちもあった
「優しく彼女を見つめてた目が
急にすごく憎いモノを見るように変わった」
―――――――え?
「南さんに男のドクターが話しかけた瞬間でした
私は翠さんのその目を見た時
父を思いました」
「院長を?」
「ええ。
父は私の母を愛してた
母と結婚出来なくて
別に家庭を持っても
母を愛し、私を作り
お金を送り、マメに顔を出して
少しでも母に男の影を感じよう物なら
殴り倒した父と
翠さんは同じ目をしてた」
「――――――――――……」
言葉が出なかった
「南さんと翠さんは
どんな関係か
心配になり、父に訊くと兄妹だと
そして父は『なぜ鈴木先生のことを訊く?』と言ったので
紹介して欲しいと頼みました」



