自分の知らない間に
他人が
そんな気持ちで自分を見てた
それは
すごく複雑な気持ちになる
だってオレは気持ちに応えることが出来ない
「見てるだけで良かったの
それは本当です
私みたいな
太めで取り柄のない娘を
翠さんみたいな素敵な人が振り向くわけがない―――――――――」
美紅さんの柔らかい視線は
急に陰りだし
彼女は目を伏せた
「今年の春
あんな翠さんの目を見るまでは
私は翠さんに自分の存在を知らせようとも思わなかった」
「………今年の春?」
静かに美紅さんはうなずいて
「今年の春に入り
あなたの様子は変わった
院内を歩く時、いつも何かを探すような目をしてた」
ドキッとした
美紅さんは本当にオレをよく見ていたんだ
「しばらくして、病院のロビーの一面のガラス越し
中庭の方を見つめる翠さんを見かけて何を探していたのかわかりました」
そう、今年の春から
オレは
「中庭には南さんがいた
あなた、いつも院内を歩く度
春から働き始めた南さんに
偶然、会えないかって
探していたんでしょう?」
彼女の言う通りだった
でも、だけど
やっぱり府に落ちない
彼女は勘が良すぎる―――――――――――――



