あの男………
「雅哉さん?
………取ってないよ」
あの後、一度、酔って寝てしまったお詫びの電話をした
雅哉さんは『あんなお兄さんなら南さんがそうなるのも無理ないね』って笑ってた
私には さっぱり意味がわからなかったけど……
「本当に連絡取ってないの?」
疑わしいと言わんばかりに
お兄ちゃんは
私の顔をのぞき込む
「取ってないよ」
グッと手を握って言うと
憮然とした表情のまま
ぶにっ
私の頬を摘まんだ
「!?」
なんで頬っぺた つねるの~?
「姫。オレ、姫が好きだよ?」
ドキッ
……それは妹だからだよね
シスコンお兄ちゃんめ
無駄にドキドキさせないで
―――ピリリリリ
少し重い沈黙が
私たちを包んだ時
テーブルの上、お兄ちゃんのケータイが鳴った
ソファーから立ち上がり
ケータイを取って画面を見たお兄ちゃんは
「…………母さん?」
少し驚いたように呟いた
『お母さん』じゃなく『母さん』って事は
お兄ちゃんの育ての親
鈴木家のお母さんからだ



