3枚目のワイシャツに
手を伸ばしながら
「ねぇ」と
お兄ちゃんに声をかける
「ん?」
「鈴木先生、結婚するの?」
「なんだよ、急に」
「だって先輩から
訊かれるんだもん
鈴木先生は
病院のアイドルだもんねぇ~?」
ちょっと からかうように言うと
「何度も言ってるだろ?
結婚なんてしないよ」
表情を変えずに
お兄ちゃんは答える
「美紅さんと もう会ってないの?」
「会ってません」
「連絡は?」
「取ってません」
「おかしくない~?」
「何がだよ?」
「急に家来て夕食作るような人がさ、あっさり引くの?」
私はお兄ちゃんを横目でにらみ
「私に隠れて付き合ってるとか」
「はぁ~」ってお兄ちゃんは大きなため息をついて
「あのなぁ」って
私を真っ直ぐ見つめて
「一緒に暮らしてたら
オレが仕事以外で
家を空けてないのわかるだろ?」
「……う~ん。確かに」
そうだよねってお兄ちゃんの言葉に納得して
ワイシャツの上
アイロンを滑らせる
「じゃあさ、先輩には何て答えたらいい?」
私の質問に すごく面倒くさそうな表情を浮かべて
「事実を伝えれば?
でも、オレ小児科のナースなんて知らないし
放っておいて欲しいけどね」
うん、うん。
やっぱり知らない人に自分の噂をされるのは嫌なのね
……当たり前だよねぇ



