その日の夜、お兄ちゃんの帰りは遅かった



》遅くなるので、
夕食いりません



そうメールが来てたから


1人寂しくスーパーで値引きされたお弁当を買って食べた



なんだか疲れた気がして



9時過ぎにはベッドに入って眠ってしまった





ふと目が覚めて暗闇の中
枕元のケータイに手を伸ばし時間を確かめると


1時26分



ゴロリとうつ伏せになって


「ふぅ…」と息を吐くと



美紅さんが家で夕食を作った日の事を急に思い出した




このベッドで


お兄ちゃんは私を抱きしめた



あの日の腕の力強さ
手のひらの大きさ

お兄ちゃんの匂い



身体の奥から立ちのぼるようによみがえって来て




「―――――――…………っ」



叶わない想いだって知ってる



だけど



切なさに
堪えきれなくなって



私は起き上がり部屋から出る



もう家中の電気は消えていて



暗い廊下を歩き



向かったのは



お兄ちゃんのベッドルーム



ドアに手のひらをつけて
少し考える



このドアの向こう、
お兄ちゃんはもう寝てるよね



こんな夜中に私は何をしたいの?