楽くんをおばあちゃんに預けて
雅哉さんとタクシーに乗り
ダイニングバーに入った
雅哉さんはメニューを開き
「何を飲みますか?」
そう訊いたから
「ウーロン茶で」とおしぼりで手を拭きながら答える
メニューから視線を私に移して
「お酒、全くダメですか?」
「ダメってことは……
でも弱くて、すぐ酔ってしまうんです」
「う~ん」と雅哉さんは少し考えてから
「一杯くらいは大丈夫でしょう?
帰りはちゃんと送りますから」
でも、お酒はお兄ちゃんが……
『オレの前以外で飲むなよ』
そうきつく言われてるんだけどな
「松雪さん?」
「あ、はい。じゃ一杯だけ」
勧められたのと これから始まる話の内容を考えたら
少しお酒があった方がいいかなと思った
雅哉さんがオーダーしたビールと私のカルアミルクが届き
生春巻きや唐揚げなどを軽くつまみながら
他愛ない世間話をしてるうちに
私はカルアミルク一杯ですっかり酔ってしまった
あ~、私ってお酒弱すぎなんだ
だから お兄ちゃんは あんなに きつくお酒のことを言ってたんだ
そう思った時は すでに遅かった



