青い青い空が広がる


病院の屋上



高い緑色のフェンスに寄りかかり


新と話をしていた




「……それで翠くんは望みを抱いてしまったわけだ」



美紅さんが家に来た日の話をオレから聞いて



あきれたように新はため息をついた



「『もしかしたら姫はまたオレに惚れるかも』そう思ったわけだな?翠」



「惚れる……って
そんな風には思ってないよ」



ただ、嬉しかったんだ


美紅さんの事で怒る姫を見て


やきもちを妬いてくれたんだって思ったら………



「翠、ぼくはやっぱり……
今ならまだ引き返せる
姫子ちゃんの事はあきらめて
美紅さんと結婚しなよ?」



なだめるような口調の新をチラッと見てから


空を見上げた



「姫子ちゃんが翠を忘れたのは
やっぱり いい機会だと思うんだ」



青い空には2羽トンビが羽を広げ、風に乗ってた



「姫子ちゃんのためだよ?
翠だって前は6年も姫子ちゃんと別れてたじゃない?
どうして今はそれが出来ないかな?」



「姫がオレと一緒にいたいって言ったから」



「え?」



「記憶を失ってもオレの元へ帰って来てくれたから」



なんて ホントは理由なんてない



オレは姫を離したくない


それだけ なんだよな