「……、いってきます。」




『いってらっしゃい』


…しばらく聞いてない台詞だ。

秋月さんはそう言って、軽く手を上げて、私に向かってふってきた。


なんだか心が温かくなって、思わずこぼれた笑みと一緒に、秋月さんに手をふった。




「…やっぱり変な人。」


秋月さんに背中を向けて歩き出して、思わずぽつりと独り言。


昨日会ったばかりの他人に、いってらっしゃい、だなんて。

…若い人はなかなか言わない台詞だと思うんだけど。