「お前たちは知らない方がいい。これ以上はな。裏の世界の事だ」

「はあ……」

 我々の世界だって裏の世界と呼ばれているのに、傭兵の世界はさらに裏なのか……部下は片眉をぴくりと上げた。

「……」

 ボスと呼ばれる男は口をつぐむ。

 言える訳が無いだろう……奴が不老不死などと! 裏の世界では“公然の秘密”扱いだがそれを口にしてはいけない事くらいわしでも解る。

 ケチな組織だが殺される事は無い。

 しかし奴の正体をやたらと口に出せば殺されるのは確実だ……殺しに来るのは本人ではなくまったく面識の無い奴だろう。

 奴の存在を公にしたくないさまざまな理由を持つ者が大勢いるんだ。

 そんな事よりこれからどうするかだ! 奴に睨まれて無事でいられた組織は無いんだ。

 いっそこのまま逃げようかな……男は心の中でつぶやいた。