「俺、もうすぐアメリカに行かなきゃいけねぇんだ」


アメリカ…遠いような近いような4文字の固有名詞が香織の頭の中を回る。

「もうすぐっていつ?」


考えるより先に聞いていた。
香織は珍しく冷静な自分に少し驚いていた。

「詳しくはまだだけど…後、二ケ月くらいか?」


「あたしも一緒に行く!!」


気がつくと香織は大声で叫んでいた。
仕事も両親も友達も後で考えればいいと思った。

それほどに香織は良太の事を大事に思っていたのである。



「馬鹿!声が大きいんだよ!」


良太が諭すように言ったのも当たり前だ。
香織が叫んだ直後香織と良太はしばらくの間周囲の目に晒されたのだから。


「…でも、お前の気持ちは嬉しい。ありがとな?」


優しく微笑んだ良太に涙が出た。
久しぶりに見た笑顔だった。