「怖かったんだよ!!お前が離れてくのが…だから言えなかった」
ふてくされたように言う良太。
その様子にはいつもの様な余裕のある姿は見られなかった。
香織が冷たい、と悩んでいた時、良太も悩んでたのだ。
どん底に落ちていた気持ちがまた昇ってきた。
今、香織の心は嬉しい気持ちでいっぱいだった。
あたしはこんなに想ってもらえてたんだね、良太。
そう思うと自然と香織の顔には笑顔が浮かんだ。
「なっ何笑ってんだよ!!」
肩が震えているのに気づいたのか良太が恥ずかしそうに反論する。
「あたしも寂しかった。あんまり会えなくて悲しかった。良太も?」
良太の胸に顔を押しつけながら聞く。
頭をぎゅっとさらにきつく押し付けられた。
「当たり前じゃん。でも、仕事増えてばっかで…」
良太は今の会社の後継ぎだった。
忙しいのは知っていたが、香織は月に一回がいい方という寂しさに耐えられなかったのだ。
自分がわがままだというのも分かっていた。
「それでその事なんだけどな?俺、お前に言わなきゃいけない事があんだ」
少しだけ曇った良太の顔に不安を覚える香織。
なんだろ?
悪いことじゃなきゃいいけど…

