立ち上がった愛菜はぴしっと背を伸ばし、女の子の方へ歩いていった。
その背中は頼りがいがありそうな背中だった。
今、ナツにだけはとても小さく見える。
愛菜にべたぼれしている自分に気付いて軽く苦笑いをする。
「はい、どうぞ」
落ちついた声で女の子に話しかける愛菜はさっきまでナツに不安げに話した人とはまるで別人のようだった。
「あっすいません!ありがとうございますっ」
女の子は地面から目を離し上を見上げる。
愛菜の存在に一瞬驚いたような表情になったがすぐにまだ幼げの残る笑顔に変わった。
「いいのよ。誰と来てるのかしら?」
しゃがみつつ女の子に聞いてみる。
整った愛菜の顔に圧倒されつつ、女の子は恥ずかしげに答えた。
「えっと…裕也じゃなくて、彼氏とです!」
さっきの自分に見せた笑顔よりも数倍可愛い笑顔に思わずつられて愛菜も笑顔になる。
「もうすぐ来ると思います。待ち合わせしてたから…あっ」
少し遠くの方から駆け寄ってくる男の子を見て、女の子はさらに嬉しそうになった。
愛菜はこれ以上邪魔しちゃいけないと思い、立ち上がった。
「じゃあ、いい夜をね」
ちょっとキザかと思ったが‘はい!’と笑顔で答える女の子を見てると間違った言葉じゃなかったと思えた。
戻ってきた愛菜はまたナツの膝の上に座るのはやめて隣に座った。

