「…本当に、一番綺麗?ナツはあたしより若い女の子に惹かれたりしないの?」
恐る恐る聞いてきた愛菜。
その質問はきっとずっと胸の内に秘めていたものなのだろう。
何て返ってくるかが怖くてなかなか聞けないでいたのだが。
「なーに言ってるの?俺は愛菜と結婚するんだよ?あれ?愛菜はそう思ってくれてなかったの?」
少し悲しそうに言うと、
「ごめんっ違うの!不安だったんだ。あたしより綺麗で若い子なんて余るほどいるからナツがあたしと付き合ってくれるのが…」
と本音を言ってくれた。
だから、さっきから一番綺麗って言ってるのになぁと思いながらまた頭をよしよしとなでる。
「愛菜が一番綺麗って言ってるじゃん。信じてないの?俺の事。大丈夫だよ。愛菜が1番綺麗」
ゆっくりと愛菜に伝わるように言うと、‘ありがとう’と小さく呟いてくれた。
その時、コロコロと愛菜の足もとに転がってくるものがあった。
愛菜が手に取って見てみると、それは若い子が使いそうな派手な色遣いのリップクリームだった。
「あぁ~」
溜息ともとれる声をあげながら近づいてくる女の子はどうやら地面にバックを落としてしまったらしく、辺りにはその子のものと思われるものが散乱していた。
愛菜はナツの顔を一瞬見た。
届けに行ってもいい?と聞くように。
ナツはにっこりと微笑んで腰にあった手を外した。

