お世辞ではなく本当にその日の空は綺麗だった。
次から次へと流れていく無数の星は月明かりに照らされきらきらと光っていた。
ナツ達が来ている丘も恋人から子供連れまでたくさんの人がいるが今は何かに包まれたように静かだった。
「本当だ…綺麗…」
急におとなしくなった愛菜の腰に手を回す。
もう愛菜は何も言わなかった。
「愛菜より綺麗」
定番のセリフと逆の言葉を言ってみる。
夜空を見上げていた愛菜が俯いた。
こうなるとナツのサド心が動き出す。
「あれ?愛菜の方が綺麗って言ってほしかった?」
定番が大好きなのが女の子と言うのは、一個上の姉から学んでいたがそこはあえて愛菜に聞く。
「そっそんな事ないからっ」
からかわれているとも知らず、愛菜は涙目になりながらも反論する。
「うーそっ!愛菜が一番綺麗っ」
頭をよしよしと撫でながら慰めモードに入る。
涙もろいというのは付き合う少し前に知っていた。
付きあってから、一緒にテレビを見たり、愛菜が本を読みながら泣いてるのを何度も見た。
つくづく、周りの目とは反対だよなぁと思うナツも最初はそんな思いを持っていた。

