「………………
それで
何が必要なのですか?」
「あ…はい
香織さんの携帯電話が残してあれば―」
婦人は私に背を向け、数歩進むと立ち止まって言った。
「それは…
私が唯一、あの子に手作りした服です…
香織以外に知る人はいません…」
暫くして
婦人は玄関ホールに戻って来て、携帯電話を私に手渡した。
「まだ解約の手続きはしていません。
当時のままになっています…
御用が済み次第
返却して頂ければ結構ですから…」
「あ、ありがとうございます!!」
携帯電話を受け取ると、私は玄関を出た。
外はもう
雨が止んでいた―。
私は
江藤さんが自殺する直前の状況が知りたかった…
恐らく
Fにその秘密があるに違いない。
その為には
どうしても彼女の携帯電話からアクセスする必要があった…
帰宅中のバスで携帯電話に電源を入れると
ロックはかかっておらず、すぐに操作が出来た。
メール履歴やデータファイルには、それらしい情報は何もなかった…
やはり
Fに接続しないと―
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