「どちら様ですか?」
ハキハキとした中年女性の声―
「あ、私…
磯辺 京子と申します。
香織さんの事でお伺いしたい事がありまして…」
オドオドした私の応対に不信感を抱いたのか―
それとも
本当に話しをしたくなかったのか…
「お話しする事は何もありません」
と即座に
インターホン越しに断られた。
それはそうだ。
いきなり
見ず知らずの人間が尋ねて来て、亡くなった娘の事を尋ねる訳だから…
しかし
私にはもう時間が無い―
こんな事で怯む訳にはいかなかった。
再度インターホンを鳴らす―
ピンポーン
「あの…
少しだけでいいんです」
「……………」
プツ
仕方がない…
門の様子はモニターで見えているはずだ。
誰かが出て来るまで門の前で待っていよう…
私は、
門の前に座り込んだ。
どれ位の時間座っていたのだろうか…
空が朝より暗くなり雨が降り始めた。
その雨はやがて
雷を伴って土砂降りになった―
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