レイが伝えたのは、最悪の事態。

にもかかわらず、モニターの向こうのケリガンという女性は、表情一つ崩さずに応対していた。

まるで他人事みたいに、事務的に仕事をこなす。

「了解しました。アメリカ連邦議会とEU諸国に働きかけて、島全域と周辺海域のミサイルによる焼却処理の承認をとってみます。同時にこちらから、脱出用の迎えのヘリを手配しますので…一時間以内に、島の沖合いのこのポイントまで移動して下さい」

無線機のモニターに、ポイントの位置座標が送られてきた。

「OK、じゃあ無線を切る。手配頼んだぞ」

レイはいたって冷静なまま、通信を終了した。

でも、交わした会話の内容は、私にとっては驚愕すべきものだった。

「島を焼却処理…?」

「ああ…この島はもう駄目だ。10億もの人体改造用ナノマシンによって汚染されている。大量破壊兵器…ミサイルによって、島全域を焼却処理するしかない」