凶器として思いつくものは、全て手にしている。

それ程の数々の道具を携え、正気を失った人々が私に群がる。

…掴まれたら終わりだ。

恐怖に飲み込まれそうな中で、瞬時に私は冷静な判断を下す事ができた。

半ば体当たりするような形で、私は群集の中心へと突っ込む!

不意打ちに近い形だったのが幸いした。

集団の先頭に立っていた男性が私の体当たりでよろめき、転倒する。

それに巻き込まれるように、二人三人と路上に倒れる人々。

私はその間隙を縫って囲みから抜け出そうとして。

「きゃっ!」

転倒した男性に足首を掴まれた。

足を取られ、私自身も倒れる。

地面に這い蹲るような形でうつ伏せになった。

そこへ、中年女性が近づいてくる。

どこを見ているのかさえ分からない虚ろな目で、逆手持ちに握った包丁を私目掛けて振り下ろす!