1/ 静かな夜に響く、大きな二つの足音。 夜の住宅街を男は走っていた。後ろから追いかけてくる奴に捕まらないように、必死に……必死に……逃げていた。 手には凶器、捕まれば間違いなく殺される。 足が重い。 かなり長い距離を走ったはずなのに、後ろの奴は少しもバテることもなく追い掛けてきていた。 その差は徐々に、徐々に、縮まっていく。