空を見上げると、一面に雪雲が広がっている。


時刻は昼を少し過ぎた頃。
普段なら1日の中でいちばん暖かい時間帯のはずだが、陽が出ていないので、冬用の厚手のコートをはおっても寒さを感じる。

いつもは賑やかなここの街通りも、寒さのためか、人通りがまばらである。


そんな中、通りに面した小さな宿[スノーマン]の一人娘・メアは、白い息を吐きながら、玄関から通りの様子を窺っていた。


かじかむ指先に息をはぁっと吐きかけ、ポツリと呟く。


「こんなに寒いんじゃ、お客さん来る訳ないか……」

そして、フゥッとため息をつきながら宿の中へ入ると、客のいない食堂を抜けてキッチンに向かった。



「あら、おかえりー。街の様子はどうだった?」


昼食の片付けをしていた母・ノアが、にっこり笑いながらそう尋ねた。
メアは首を振り、口を尖らせながら報告をする。


「ぜーんぜん!通りに人がほとんどいないの。お向かいのアニーおばさんまでいなかった。外、スッゴい寒いしっ」


「あらあら。それはご苦労様でした!」


ノアがケラケラと笑う。