何も考えずにただ全力マッハで走った。
(やばい、人がいる!!)
人間、急には止まれないもので。

ドカッ

そんな音がして、私は前の二人とぶつかった。


「ごごごごめんなひゃい!!!」

私が慌てて謝ると、ハニーブラウンの髪色をして、銀縁フレームの眼鏡をしたお兄さんが例えるなら天使が舞い降りてきたような笑顔で私にハンカチを差し出した。

「大丈夫?ケガはしてないかな??」

「だっ、大丈夫でっす!!!」

(どもりすぎだよ私!でっすって何!?体育会系じゃん!!)

一人ツッコミを終えると、今度は黒髪の人と目があった。
煙草をふかしているその人は、めつきが鋭かった。

「チッ」

…………えええ〜!?
そのひとは本人がいるとか関係なく、舌打ちをしてきた。
で、ちょっぴり睨まれているような気がした。

「雄二、そんなに睨んだら怖いだろ。
ごめんねお嬢さん」

すごく申し訳なさそうに謝ってくるお兄さんに、なんだか色々くすぐられた。(多分母性本能の類)


「いえっ、あのっ、私が悪いので!気にしないでください!!」

「ごめんね、ありがとう。

それよりもお嬢さん、何か急いでいたみたいだけど大丈夫かな?」

「!!!」

時計を見ると6時半を過ぎていた。
一言あやまってから、私は顔面蒼白の顔で駆け出した。