店の自動ドアを抜けると、店内から挨拶が飛び交う



店を見渡してみても、真緒の姿も颯の姿も見当たらない



タクさんのサプライズってそういう意味?



うそだぴょん的な?



いや、タクさんに限って、そういう嘘は吐かないだろう




売り場で作業してる店員に声をかける



「颯、いますか?」



彼女は少し考えると、にっこり微笑んだ



「女性の方が来られて、一緒に出て行きましたよ」



「ありがとうございます」



頭を軽く下げ、店内を後にする



「あっ!!」



と、その時店員さんは何かを思い出したのか、大きな声を上げた



「彼女なのかな?いきなり泣き出して、颯くんかなり焦ってましたよ。あれは喧嘩じゃないのかな…」



また会えなかった



再び頭を下げると、重くなった体を走らせる



真緒が泣いてる



そのことが胸にずしりとのし掛かる



店の外で周囲を見渡してみても、それらしい人影はない



颯に電話しても繋がらない



バイト中だから携帯持ってるわけないか



いよいよどうしていいか分からなくなった


一度真緒の家に行ってみよう



もしかしたら帰ってるかもしれない



そう来た道を引き返そうとしたとき、2つの黒い影が遠くに現れた



「真緒っ!!」



見間違えるはずない



その影は、俺の声にピタリと止まると、凄い勢いで消えていった



「真緒っ!?」



遅れて駆け出したけど、追いつけそうにない



やっぱり真緒だ



真緒は昔から足が早くて、運動神経が飛び抜けてる



追いつけなくても、見失うこてはないだろ


そう信じて、遠くを走る小さな影を追いかけた












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