「もう少し頑張ってみればいかがですか?」

「頑張っていいのか?」

「粘り勝ちっていう作戦もありますし」

「それ…どんな作戦?」

「…まあ、ひたすら粘るとか…」

椎名さんがにこっとほほ笑んだ

寂しそうで、悲しい目だった

椎名さんはコクンと頷くと、両手で自分の頬を叩いた

ぱちんと乾いた音が鳴った

え?

なんで、叩いているんですか?

痛くないんですかっ

「そうだな
頑張ってみるか
望みはなくても…どうにかなる」

それは…どうでしょうかね

相手の気持ちが変化しなければ、意味がないですから

「…てことで、有栖川…下の名前のほうが親しみがあるかっ
聖一郎、着ものを脱ぐ」

「は、はひ?」

椎名さんが再び立ち上がって、着ものの帯に手をかけた

「ちょ…ちょっと」