あたしが席に着くと、後ろの席のあおいが話しかけてきた。

笈川あおい【おいかわ-】。


「うん!!笑顔が可愛かったな~」


想い出すたびニヤける口元。

恋愛の話も隠さず出来る。

優梨の次に素が出せる友達。

ピ―――――

夏帆があおいとふざけてると、突然スピーカーが鳴った。


『…3年生のみんな。おはよう』


理事長の声だ。


『先生方、理事長室に集まってもらいたい。至急の会議だ』


「…ということだ。ちょっと待っててくれ」


担任はそう言ってめんどくさそうに教室を出た。

ざわざわ…

担任が居なくなって20分。

教室は休み時間のように騒がしくなった。

夏帆は優梨とあおいと話していた。


『3年生の諸君、おはよう』


教室のざわつきが少しおさまった。

この声…誰?

理事長でも校長でもない。

今日は1・2年生は休みで、3年生だけの登校。


『今日は“卒業試験”をする』


今は11月だ。

もうすぐ前期の試験の追い込みなのに…

“卒業試験”なんて聞いたことない。

担任は何してんの?


『テレビをつけてほしい』


弘樹が素早く動いて、スイッチをつけた。


『映ってる~?』


突然手を振る人が映った。

顔は見えない。