修平が席に着くと、急に笑い声がする。

その笑い声は、可笑しいものを見たときの笑い声で、クラスの視線は修平に集中している。

修平は不思議に思ったが、急に教科書を出そうと机の中に手を入れた。

国語の教科書を取った。

…何だ、これ。

修平は一面に『死ね』・『消えろ』と、赤い字で書かれている教科書を眺めた。


葉が赤く染まりつつある9月上旬。

修平の孤独の戦いが始まった――――

バンッ

修平は怒りに満ちて、机を叩いた。


『んだよこれ!!』


クラスメートを睨みつける修平。


『どうしたの?七道くん』


担任は冷やかな目で修平を見つめる。


『これ誰が書いたんだよ!!』


教科書はぐしゃぐしゃに折れている。


『落ち着けよ、修平』


『冗談だっつーの、な?』


男子の声と笑い声が飛び交う。


『修平は気にしすぎなんだよ』


『死ねなんて何で書くんだよ!!』


修平は初めてのことに、戸惑いと怒りを隠せずにいた。


『冗談っつってんだろ、そんなのも分かんねーの?』


馬鹿にしたように笑われた修平は、カッとなってハサミを持ってその男子に飛びかかった。


『何すんだよ!!』


『お前なんか、お前なんか…』


“死ねばいい”


不意に頭をよぎる悪魔の囁き。