「うん」


「私、取るよ」


琴葉は制服の袖をまくった。


「いいの…?」


「大丈夫!!みんな、嫌でしょ?」


琴葉はすごい。

嫌なことは進んでやるタイプだ。


「…あ、もう少し…」


思い切り手を伸ばして携帯を取ろうとする。


「取れた!!」


そう言った後、琴葉が真央の携帯を開いた。


「え…嘘…」


携帯は真っ暗で、電源をつけようとしてもつく気配はない。


「何で…」


助かる方法が見つかったのに――

打ち砕かれた、一筋の光。


『外部との連絡はできないように、全ての配線を切った』


そんな放送が入ったのは、夏帆たちが絶望の真っ只中にいたときだった。


「職員室も…全滅」


龍は職員室に行ってもらった。

あの職員室に入れるのは、誰だって嫌だ。


『女子には無理。俺が行く』


先頭切って言ってくれた。

龍の優しさは、前までは胸がときめいた。

でも、今は緊急事態。

『生死』の一刻をあらそう。

こんな状態じゃ、胸なんてときめくどころか、恐怖で高鳴るばかり。


「嘘…もう、助からないの――?」


琴葉は座り込んだ。