「思い返してみると、最低なやつがいたな~って」


俺にとって最低なやつ、俺にとって嫌いなやつ。


「そいつは…死んだ?」


わざとらしく聞いてくるJに、俺は呆れる。


「まだ――死んでない」


死んでない、いや…死ねない。


「早く死ぬといいわね~…」


まだイスをくるくる回すJが、感情移入したのか知らないが俯いて言った。


「本当にそう思ってるんだか」


俺は小さく溜息をつく。

フッ

Aは微笑む。


「Aにはお見通しね。私には、1人しか見えてない」


いつもの鋭く、誰かを捕らえるJの目に戻った。


「分かってますって。Jのおかげで計画実行出来るんですから」


そう…こいつがいなければ始まりも終わりもしない。

Aは笑った。

人間なんて、偽者の笑顔で騙される。

でも、あいつだけは違かった。

7年前のあの日の出来事が、

俺の中の何かを目覚めさせたんだ――

そうだよな?

お前は今も、俺のこと…友達としてか見てないのにな――

少し期待してる俺が笑える。

こんなことがバレたら、一生逢えなくなるのに。

言ったらきっと、あいつのことだからやめろって言うんだろうな。

でも、決めたんだ。

だから、言わねぇ。

最後ぐらいは俺にかっこつけさせてくれよ。

あいつは絶対死なせない。

なんとしてでも。

たとえ俺が死んだとしても――――