夏帆たちは少し近くに見えるけど、

みんなあたしがいないって…気付いてない。


「卒業、したい~?」


萌香の耳元で囁く声は、聞いたことのある声だった。


「あな、た――――?」


萌香は掠れた声で名前を言った。


「そうだよぉ…」


その声はゆっくりと言った。

まるで、後ろからの獲物を殺す瞬間のように…

グサッ

…え?


「八野萌香ちゃん、ばいばあい★」


刺された背中が妙に冷たく感じた。

っ、足に力が入らない…

萌香はそのまま音も立てずに、ゆっくりと崩れ落ちた。

真央…小結…夏帆…

今までの思い出が走馬灯のように駆け巡った。


「みん、な…逃げ、て…」


最後に見えたのは、あたしを刺したあの子が、ゆっくりと小結に近づいた瞬間だった。

あの子に殺されないで…

萌香は手を伸ばした。

小結…

プツンッ

そこで萌香の意識は途切れた。



「萌香、萌香は!?いないっ!!」


小結が叫んだ。

萌香…!?


「小結…逃げて!!後ろっ」


優梨が叫んだ。

夏帆たちは小結の後ろを見た。

キキキキ…

あの音は、包丁を壁に擦り付けてる音だったんだ。