「そういう時だけ父親面なんだ・・?帰ってよ!!」


「すまん・・。絵梨・・」


「絵梨佳!」


1人の男が腕に抱えていた2本の缶コーヒーを投げ捨て絵梨佳に駆け寄ってきた。


「絵梨佳!大丈夫か?左頬が赤い様だけど。」


「春彦・・何でも無いよ。大丈夫。お父さんにぶたれただけだから・・。」


「絵梨佳、ナースセンターで氷嚢を借りよう。すぐ行くから、先行ってて。」



「うん・・。」





「君は・・?」



「初めまして。赤尾春彦と申します。
絵梨佳さんとは大学の後輩で結婚を前提にお付き合いさせて頂いてます。
安心してください。僕と絵梨佳でお義母様を介護します。
だから・・。もう二度と僕達の前に現われないでください。」


赤尾はそう言い、その場を去った。





「俺は・・俺は何をしているんだ・・。」





私は泣いた。力が抜けたように跪いて泣いた。



私は妻に何かしてやれただろうか・・?



私は娘に何かしてやれただろうか・・?





私は何も出来なかった。