その頃、二神監督は監督室で煙草を吸っていた。


スゥウウ、フゥー


『二神君。素晴らしいね。僅か25年間で春夏合わせて38回も甲子園出場させ準優勝9回とは。』


『いえ。全て選手達のお陰ですよ・・。』


『そう。君のお陰じゃない!!厳密に言えば我々のお陰だ!!特待生や推薦制度で有望な選手を引っ張って来た我々のな!』


『・・。』


『はっはっはっ!まぁ、少しは君には感謝してるよ。しかしだ。甲子園で優勝出来ない監督は今の桐英にはいらんのだよ!!
周囲からは八百長してるのか!?って言われて私も非常に困っている。
今年の夏の甲子園を優勝する事が出来なかったら・・。分かっているな?』




『はい・・。』





スゥウウ、フゥー





「二神さんは地獄の様な練習で選手を鍛え、5年前の夏の甲子園決勝に駒を進めた。」


「俺、その試合観てました!」


「俺も観た!」


「俺も!」


沈黙していた俺達は油を注いだかの様に騒がしく共感しあった。


「うん。君らの記憶にはまだ新しいだろう。桐英学園のプロの様な選手達。
そして・・。
桐英学園悲劇の10度目の準優勝・・。」