二神監督はそう言うとグラウンドを後にした。


「あれが名将か・・?」


皆が呆気に取られる中、俺がボソっと呟いた。


「5年前までは般若の二神とまで言われたもんだがな・・。」



王島コーチも呟いた。



王島コーチは皆をベンチに座らせ二神監督の過去を教えてくれた。


「25年前。二神さんが桐英学園野球部に監督に就任した。
新設の野球部で特待生や野球推薦制度はまだ無かった。でも二神さんの指導と采配で僅か3年で桐英を甲子園に出場させた。
すると入学希望者は殺到。学園側も特待生や野球推薦制度を導入したり、中等部を設立したりで。
私もその桐英の特待生の1人だ。
そして10年も経たない内に桐英学園野球部を甲子園常連校に二神さんは育て上げた。」



俺達は息を呑んで聞いた。


王島コーチは続きを話した。



「やがて桐英学園は全国でも名を轟かせ、甲子園でも上位の成績を納めた。
だが、何故か甲子園の決勝に何度進んでも桐英学園は勝てなかった。」



「えっ・・!?」



俺達は皆、驚愕した。



「そう。二神さんは甲子園決勝の勝ち方がわからなかったんだよ・・。」