「ぎっくり腰ぃ?」
「うん」
「おまえそんな歳だっけ?」
「少なくともお兄さんよりは七つも若いんですけどね」
いつものようにあたしの部屋でビールを飲みながら、彼は楽しそうに笑った。
眼鏡の奥で、少し小さめの目が細くなる。
子供みたいな、自然な笑い方が好き。
「ぎっくり腰って、痛いの?」
作っておいたサラダを食べながら彼は尋ねた。
「うん、相当」
「へぇ」
不思議そうにこっちを見る。
「おかげでトイレも着替えも人の3倍くらい時間がかかるんですよね」
そういうと、よっこいせ、という言葉とともに、できる限り慎重に腰をおろし、こたつの中に潜り込んだ。
