ビールだって、コーヒーだって苦くて嫌いだった。 淀んだように広がる苦味が、心の奥の方に響いて、なんだか嫌気がさしてた。 あたしはいつから好きになったんだろう。 きっと、貴方を好きになってから、ね。 やめたはずの煙草に、もう一度火をつけた。 口の中に広がったのも、独特の苦み。 目の先で立ち上る煙が、妙に悲しくて、少しだけ目を閉じた。