俺はメモ用紙を、雪乃に突き返した

だが

雪乃の反応は意外だった

頬を膨らませて、俺の目を見上げると睨みつけてきた

え?

『嘘を言わないで
字を見ればわかる
あなたが茶佑君でしょ?』

手慣れた手話を俺に見せる

初めてだな

俺に手話を見せるのは……

なんで俺が手話が理解できるって知ってるんだよ

雪乃と話すつもりなんかないのに…

ついつい手話の本を広げて、勉強してたのをどっかで見てたのかよ

もう5年も会ってないのに

事故に遭ってから一度も話してないのに、よ

「なんだ、バレてんじゃん」

俺はぽつりと独り言をつぶやいた

無意識で出た言葉は、冴子としての声ではなく

すっかり茶佑に戻っている

仕事中なのに…駄目だな、俺…