くそっ

落ち着けよ、俺

雪乃は俺だと気づいてないはずだ

俺が女だとはわかってないはずだ

黙っていれば、大人しく家に帰る

…てか、大人しく家に帰ってくれ


「どのような用件でしょうか?」

「あ…」

雪乃は小さく声を漏らすと、メモ用紙を俺に見せた

『ここに飯島茶佑さんはいらっしゃいませんか?』

なんで俺を探してるんだよ

あれからもう5年だぞ?

今更、俺に会ってどうするんだよ

頼むから

さっさと兄貴と幸せになってくれよ

「いないわ」

雪乃が首をかしげる

「い、な、い」

俺はゆっくりと口を動かして、雪乃にわかるように言った