「う……ヘックシ!」

と豪快なくしゃみの直後。
「あぶねっ。」
という低い声が瞼の裏側にこだました。

「んん?」

なぜか鼻が痛い……いや、熱い

「よっ! 今日は機嫌がよさそうだな。」

とその時、俺は満面の笑顔で語る青年の付近に、ストローが落ちているのに気がついた。

「なんで機嫌がいいと思ったんだ?」

全てわかったぞ。

「え? それは、寝ている時のレイジの顔がニヤついていたからさ。」

やっぱりか。

「ああ。それで? 俺の鼻を壊そうと思ったのか。」

「いや。そんなレイジを見たの初めてだったからつい……なっ!」

そう言うとバシバシ俺の頭を叩く青年。

「ああ。じゃあ、俺も楓の鼻を砕く権利があるな。」

そう言ってる間に俺の鼻を壊した武器を手にとり、青年……。いや、楓に襲い掛かった。

「ちょっ。待てって。あれは冗談だよ。ワルイ。ちょっと悪ふざけがいきすぎたな。おい。やめろおお。やるならせめて逆の方……」

その後しばらくは、進道は武器を楓の鼻に入れ続け、楓の泣き声とくしゃみの音だけが聞こえた。

この哀れな青年の名は、山本楓。成績優秀。スポーツ万能。さらにはイケメンという、三種の神器を兼ね備えた――

完全無欠男。なのだ。
ちなみに、古武術を極めており、レイジの大親友でもある。