「うん。わかっ…」
ラッコ先輩の声は、最後まで聞こえなかった。
先輩は、あたしの斜め上をみたまま硬直してる。
あたしの背中も、
このただならぬ空気に気付いて、鳥肌を立てた。
振り返ってみようか、迷っていたら、
ふいに、
…そう、あたしの意志には全く関係なく、
あたしの体は後ろを向いた。
「…まさか、部活長引かせて俺が帰るの期待してんじゃねーだろうな?」
…そいつはあたしの肩をガッチリつかんでいた。
「…安藤…尚」
震えるあたしは、
なぜか奴のフルネームをつぶやく。
安藤尚は、フッと鼻で笑う。
「やっぱ待てねェから、今から屋上こいよ。」
「やだ。部活あるし…!」
「部活ならないって。さっきその人言ってたろ?」
「言ってないし!ね、ラッコ先輩!」
ラッコ先輩は、ガクガクと震えながら、
「ゴメン…、夏奈ちゃん。今日は、休みにするね…?」
…そ、
そんな!!


