顔のない恋

「俺の大学の後輩にK市の
M高校出身の奴がいてさ…」

構わず話し出したウエハラ先輩の言葉に
カズキの足がピタリと止まり、
ふと見た横顔には、明らかに動揺が
見て取れた


「カズキ…?」

思い詰めたような表情、傘を持つ手は
微かに震えていて
まるで私の声が届いていないかのように
視線はゆっくりウエハラ先輩の方へ
向けられた


訳が分からなかったが、カズキの
ただならぬ様子に
一抹の不安を感じずにはいられなかった


見れば、勝ち誇ったかのような笑みを
浮かべる先輩

まるでそこだけ時が止まったかのように
身動ぎひとつせず、じっと先輩を見つめる
カズキの隣で何も聞けず、ただ立ち尽くし
ながら、耳に入ってくる先輩の話を
聞くしかなかった…